アンダルシア地方の内陸部に位置するセビリアだが、かつてこの町は外洋に向けた港町であった。
その主役が市の中心部を滔々と流れるグアダルキビル川。現在では川底も浅くなり、いくつかの橋も架けられ大型船の航行は不能となってしまったが、大航海時代、この川には多くの帆船が行き来していた。1519年には世界一周に向けてマゼランもこの町から旅立っている。
15世紀の新大陸発見以降、セビリアには大西洋を渡ってくる大量の金銀が集められた。交易を一手に独占したこの町の富は、想像を絶するほどであった。
モーツアルトの『フィガロの結婚』 『ドン・ジョバンニ』、 ロッシーニの『セビリアの理髪師』、
そしてビゼーの『カルメン』。 錚錚たる歌劇の名作が、この町を舞台としたことも偶然ではない。時代の頂点にある絢爛たる華やぎは、現代でいえばパリとニューヨークを合わせたような町。男女を巡る恋の物語には、この港町こそが最高の背景であったのだろう。
「睦言を交わすのに1日、手に入れるのに1日、相手を取り替えるのに2日、忘れるのはたったの1時間」と嘯き、放蕩の限りを尽くしたのはかのドン・ファン(ドン・ジョバンニ)だが、経済的な繁栄がもたらす退廃もこの町の大きな魅力であったに違いない。 |