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小笠原 父島

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小笠原 父島

「現代は、バーチャルな体験が主流ですから、辺鄙な島に来たらワイルドな自然を精一杯体感してほしいですね。しかし、あくまで現代らしく安全に」と語る宮川さん。また、小笠原は箱庭的な自然にできているから、マリン・スポーツやエコ・ツアーなど、さまざまな角度から楽しめことができると語る。RAOアドベンチャーツアーズを主宰する宮川典継さんは、この強制疎開中に伊豆大島で生まれた。
「祖父の代に伊豆大島から小笠原に移り住みました。娘も入れて4代小笠原というのは、いまとなっては珍しいタイプですよ」

小笠原のマリンスポーツのパイオニア的存在の宮川さんは、伊豆大島の高校時代からサーフィンに親しみ、青年時代は島で半年働いては海外に出かけることを重ねてきた。

その海に関しての豊富な経験や人脈が、ある時小笠原の島興しに役立つことになる。

「ハワイなどで行われているホエールウォッチングを、小笠原の観光レジャーの目玉としてやろうということになりました。いまでこそ一般的に知られる言葉になりましたが、当時はまだクジラといえば食べるもの、といったイメージでしたから(笑)。それで、関係者にハワイに視察に行こうと呼びかけて。僕はただ波に乗ることができればよかっただけですけど(笑)」

取材に訪れた時期はマッコウクジラのシーズン。クルーズで訪れる3月はザトウクジラが一番よく見ることのできる最高の時期でもある。(写真協力:小笠原ホエールウォッチング協会)

静かな美しい海で、誰もが簡単に楽しむことができるシーカヤック。海底の地形によって海の青が多彩に変化するのが体感できる。
南国の光を浴びて可憐に咲く花々。小笠原固有の植物も多い。
06年の小笠原クルーズではオプショナルツアーのなかに、観光だけでないダイビングやカヤック体験などマリン・アクティビティのメニューが用意されている。その水先案内人が宮川さんでもある。

「特にカヤックは、最初は小さな川からスタートしますので、どなたでも参加することができます」
始めるとほとんどの人が、川ではもの足りなくなり海に出たくなるという。

「基本的にはスポーツですが、実は一番の醍醐味は静寂なんです。海に浮かんでいると、オールを漕ぐ音や波しぶき、そして鳥のさえずりや木々のざわめき、そうした自然界のさまざまな音色が聞こえてくる。大自然と同化しながら海や空を新鮮に体感できる、これがお客さんへの最大のプレゼントかな。そんなインテリジェンスや美的なものを加えると、カヤッキングもまた違った趣になりますよ」

宮川さんは海以外の分野でも、自然保護のNGOに力を注いだり、鳥や植物など自然を観察しながら地球環境を学ぶエコツアーもいち早く始められた。

「島には小さな海岸が30数カ所ありますが、実際に巡ると砂の色の違いが分かります。
ここ(扇浦)の砂は黒ずんでますが、よく見ると小さな緑の石がありますね。それは隕石か地球のマグマにしかないもので、小笠原以外ではハワイ諸島でも見られます」

小さな小さな一粒の石から、地球の成り立ちや大宇宙に思いを馳せる、それもエコツアーの楽しみながら学ぶという真髄だ。

さて、宮川さんによれば島の暮らしや島民の意識も大きく変貌したという。
「返還後の10年は誰もが島の生活を満喫していた時代。心を一つにして支え合って生きていました。その後の10年はインフラが整備され、テレビや電話が内地と同等になり、普通に商品が手に入るようになりました。その後、空港の計画や頓挫があったりして、現在は共通の夢や幸せを見出せなくなってしまった時代なのかも知れません」

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