オプショナルツアーでは、田辺から本宮大社に至る中辺路の最終コーナー、発心門王子からの約7キロをガイド氏の案内付きで歩く予定。このコースを一足お先にご紹介しよう。
発心門王子のシンボルは赤い社殿。発心とは悟りを啓く決意をする仏教用語。この言葉のように、この王子は聖域への入り口を意味している。また発心門や王子という名称からも熊野信仰が神仏混淆に根ざしていたことが理解できる。
杉木立に囲まれた王子は静寂に充ち、蝉時雨だけが降り注いでくる。
すると一人の若者が息せき切って、猪鼻王子からの急坂を登ってきた。言葉を交わすと京都の大学生。1泊2日の行程で古道歩きをしていると言う。今回は下見で、秋には京都から熊野を往復するとのこと。その行程は、古の熊野詣では1カ月ほどの旅であったとされる。
昼食にご当地名物「めはり寿司」を広げる若者に別れを告げ、先に出発。
しばらくは一般道と交差しながらアスファルトのなだらかな道が続く。これが古道歩き?という疑念も湧くが、ガイドブックによれば、次の水呑王子までのわずかな区間だ。
周囲はのどかな山里の風景。紫に霞む熊野の山々、柔らかな緑の弧を描く茶畑、民家の門柱の上でうたた寝に耽る猫。なんでもない農村のひととき。それが不思議と美しく、いとおしく感じられる。
一帯は、NHK連続テレビ小説「ほんまもん」の舞台となった。そのロケ地案内の看板も目に付く。途中、土産物販売の無人小屋があり、やがて小高い峠を越えると水呑王子だ。 |