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熊野古道

新宮(和歌山県)熊野古道 古道への玄関口、新宮を訪れる
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熊野古道

「伏拝王子」。石段を登ると石の祠と和泉式部の供養塔がある。
三軒茶屋の休憩所と九鬼ヶ口関所跡。
最後のポイント「祓戸王子」。

峠の伏拝王子からは、本宮旧社地の森を見渡せる。はるか京から本宮大社をめざして、ようやくこの風景を眼前にした人々。その感慨を想像するのは容易い。石造りの小祠が祀られ、並んで和泉式部の供養塔といわれる小さな笠塔婆がある。

晴れやらぬ 身のうき雲の たなびきて 月のさわりと なるぞかなしき

たまたま不浄の身となる時期を迎えてしまい、参詣を諦める式部に、熊野権現は夢に現れ返歌を送る。

もろともに 塵にまじはる 紙になれば 月のさわりも なにかくるしき

後世の作と伝えられるように、権現と式部の問答歌にしては不遜ながらも、ちと不出来。しかし、この歌に象徴されるように、別け隔てなく、誰をも拒まずに迎え入れる熊野は、再生を願い蘇生を求める人々に大きな力を与え、またそれが人気の秘訣となってきた。

伏拝王子から古道は、静かな杉林の下りとなる。途中、三軒茶屋跡が休憩所となっていて、隣接の九鬼ヶ口関所跡を過ぎても下りが続く。この間約1時間、下りが多いとはいえ、地道と石畳が織り交ざる坂なので足元には十分注意が必要だ。

少々歩き疲れた頃、長い石段を降りると突然視界が開け、住宅地の一角に降り立った。なぜか狐に摘まれた感じとなる。少し歩けば最後の通過点、祓戸王子だ。祓殿・祓所と記されることもあるように、いよいよの結願の前に身を清めた王子である。現在は樫の大木の根本にひっそりと石造りの小祠が祀られている。

さて、ここから現本宮大社は目と鼻の先、裏門が間近に見える距離だ。すぐに熊野のシンボル八呎烏(やたがらす)が迎えてくれる。

熊野本宮大社の裏門にあたる鳥居。ゴールの気分もつかの間、深閑とした空気に、改めて身が引き締まる思い。 熊野本宮大社。この奥に社殿が。 かつて本宮大社があった大斎原(おおゆのはら)には、巨大な鳥居が近年建立された。
大塔川の河原に掘られた露天風呂から湯気が立ち上る。秋冬期には、川に巨大露天風呂「仙人風呂」が開設され、人気を呼んでいる。 熊野本宮大社からほど近い川湯温泉は、その名の通り川に温泉が湧く全国でも珍しい温泉だ。オプショナルツアーでは、写真正面の「山水館」にて入浴が予定されている。

ほんのさわりの古道参詣であったが、かつてこれほどの充実感をもって「二礼二拍手一礼」を行ったことは記憶にはなかった。

熊野へ参らむと思えども 徒歩より参れば道遠し すぐれて山きびし 馬にて参れば苦行成らず 空より参らむ 羽を賜べ若王子 後白河法皇

(撮影・文/宮崎 章)

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