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峠の伏拝王子からは、本宮旧社地の森を見渡せる。はるか京から本宮大社をめざして、ようやくこの風景を眼前にした人々。その感慨を想像するのは容易い。石造りの小祠が祀られ、並んで和泉式部の供養塔といわれる小さな笠塔婆がある。

たまたま不浄の身となる時期を迎えてしまい、参詣を諦める式部に、熊野権現は夢に現れ返歌を送る。

後世の作と伝えられるように、権現と式部の問答歌にしては不遜ながらも、ちと不出来。しかし、この歌に象徴されるように、別け隔てなく、誰をも拒まずに迎え入れる熊野は、再生を願い蘇生を求める人々に大きな力を与え、またそれが人気の秘訣となってきた。
伏拝王子から古道は、静かな杉林の下りとなる。途中、三軒茶屋跡が休憩所となっていて、隣接の九鬼ヶ口関所跡を過ぎても下りが続く。この間約1時間、下りが多いとはいえ、地道と石畳が織り交ざる坂なので足元には十分注意が必要だ。
少々歩き疲れた頃、長い石段を降りると突然視界が開け、住宅地の一角に降り立った。なぜか狐に摘まれた感じとなる。少し歩けば最後の通過点、祓戸王子だ。祓殿・祓所と記されることもあるように、いよいよの結願の前に身を清めた王子である。現在は樫の大木の根本にひっそりと石造りの小祠が祀られている。 |