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パラオ・コロール

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パラオ・コロール

さて余談だが、約400キロ離れた隣の島ヤップには有名な巨大な石貨がある。それは実はパラオで切り出されて海上を運ばれたという。どのように運んだのか不思議だが、このあたりの島々にはかつてかなり高度な石の文化が存在していたことは確かだ。このような陸上の不思議を、パラオ北部に位置する最大の島バベルダオブ島に訪ねてみよう。

その最北端のアルコロン州には、ストーンモノリス、ストーンフェイスと呼ばれる石碑群がある。コロールからはボートで約90分。陸路はあるが道路事情が悪いため相当時間がかかるという。

出発の朝、空模様はかなり怪しかった。小型ボートに揺られて島の西海岸沿いを北上する。ミクロネシア一帯は一年を通して東からの貿易風が吹くために、島の西側の海が穏やかだと教えられた。

美しいリゾートホテル、パラオ・パシフィック・リゾート。にっぽん丸はこの沖合に停泊する予定。にっぽん丸が沖に停泊するパラオ随一のリゾートホテル、パラオ・パシフィック・リゾートもアラカベサン島の西側の海に面して建てられている。この理由をホテルのディレクターM氏に尋ねたら、「それもありますが、カップルのお客さまにロマンチックな夕陽は絶対不可欠なんですよ」と、またまた教えられた。納得である。

アウトリーフの外側は白波が大きく立っているが、珊瑚礁内の海は比較的穏やかだ。時おり強い雨が断続的にやってきて、視界が極端に悪くなる。それにもかかわらずベテランのボーマンキャプテンは、ときどきサングラスをはずしてはフロントウインドゥ脇から顔を出して前方を凝視しながら、少しもスピードを落とさず飛び跳ねるようにボートを操っていく。

到着した港の小さな桟橋から目的地までは、車でごくわずかな距離だった。

かのイングランドのストーンヘンジやイースター島のモアイ像には及ぶべくもないが、ストーンモノリスやストーンフェイスのバドルルアウ遺跡は謎に満ちている。玄武岩の一枚岩が50基以上も、海を見下ろすなだらかな草原に並んでいる。いったい、いつの時代、誰が何のために作ったものなのかは、ハッキリとは解らない。島の伝説では、数々の石は神や精霊の手によるもの、ストーンフェイスは神が人間を石に変えたものといわれる。

小さな石に腰をおろし、自然界のさまざまな音に耳を凝らしていると、科学的な解明はどうでもいいじゃないかという気にもなってくる。神の手によるもの、それで結構。不思議は不思議のままがパラオに似合っている。

草原の丘に置き忘れたようなストーンモノリス。天気のせいだろうか、どこかもの悲しげな姿だった。
東西南北の位置を指し示すように置かれたストーンフェイス。4つの顔は、変わることのない豊かな空と大地を見続けてきた。
倒れているものもあるが、列柱のように、2列に並ぶストーンモノリス。岩の上部は丸みを帯びるようにえぐられ、石の間を何か梁のような材木を渡したとも考えられる。巨大な建造物の礎石であったのだろうか?
ストーンモノリス近くの集落には、立派な石棺が鎮座していた。かつての大酋長の墓なのかも知れない。

パラオの代表的な遺跡ケズ。それはいくつかの島で見ることができるが、最大のものはバベルダオブ島の南部アイミリイキ州にある。コロールの中心部から車で45分ほどの行程だ。

ケズには多様な形状があるが、もっとも多いのがピラミッド型階段状。そして頂上部にはお椀を伏せたような「ブックル」というふくらみがある。

この古墳のような遺跡は、仏教遺跡として近年注目を浴びている。インドネシアのジャワ島の世界遺産ボロブドゥールとサイズや構成などに類似点が多いからに他ならない。またブックルはボロブドゥールの頂きに置かれたストーゥバ(仏塔)にも大きさが近い。ボロブドゥールは8〜9世紀、ケズは10世紀頃のものと考えられ、時代的関連性も濃厚だ。

はるか太古から海を隔てた交流は、現代人の想像をはるかに超えていたことも事実。当然のことながら、この島々に仏教が伝来した可能性も大きい。しかし現在、かつて仏教が伝わった面影は島のどこも見られない。ただ摩訶不思議なことに、周囲の山が緑一色であることに比べて、ケズには樹木があまり生えない。この説明不可能な事実だけが残されている。

アイミリイキ州のケズ近くにあるアイミリイキ・バイ。パラオの伝統的な建築物の「バイ」は、古来より集会所として活用されてきた。急勾配の屋根と装飾が施された外壁が特徴だ。描かれた絵はバイごとに異なり、各地域の歴史や伝説などが表現されている。このバイの傍らには皿状の石が置かれているが、これは生け贄とされた人間の頭部を載せておく祭器であったとか。現在のパラオからは想像しにくい、かつての一面である。
歴史の忘れ物、ケズ。本格的な発掘調査はまだ実施されていないという。はるかな時の彼方で、人々はこの丘の上で何を見、何をしたのであろうか?
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